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まだ少し、妙に夜空がきれいに見える。

「イヌイグチ先生、気づいていましたか? ・・・いえ、気づかないフリをしているのでしょうね」

とH野先生が仰るので(以下略)

ご無沙汰のイヌイグチがブログを更新します。


さて、2/16-17と、岡山県緩和ケア研修会といふものに参加してきました。
大きな病院から地域の診療所で働く、1年目研修医から大ベテランの先生方まで、
机を並べて勉強させて頂きました。

なかでも印象深かったこと・・・

~・~・~・~・~

「根治出来ない癌であることを、患者さんに告げる」というロールプレイングがありました。
患者役をした時のことです。 なるだけ詳細に設定を、ということで

 30歳女性:スズキさん(仮) 夫・息子(2歳)あり 3人暮らし
 会社員をしていて、近所に住む自分の両親が子どもの面倒は見てくれている
 趣味は料理・旅行をすること
 自覚症状は特になく、職場の健診で胸部異常陰影を指摘。胸部CT・気管支鏡・PETを受けた

こんな設定でお願いしました。 診察室に呼ばれて、いざ、告知を・・・

せっかくだし、いろいろ質問して先生を困らせてやろうとか、
ロールプレイングなんだし、少しでも技術を盗もうとか、
少しヨコシマな気持ちで始めたはずでした。

「肺癌です。肝臓・骨にも転移があります」と言われた瞬間、何も考えられなくなりました。

親になんて言おう、子どもをどうしよう、そんなことが頭を巡って、
先生の丁寧な説明も聞けなくなってしまいました。

役を下りてからも、どこかにショックと悲しい気分を引きずったままでした。
窓の外の風景を見て、妙にキラキラして見えて動揺しました。

~・~・~・~・~

そんな状況で、今度はわたしが医者の役です。ニノミヤさん(仮)49歳、働き盛りの男性に告知をしました。
患者役は、とても経験豊富な先生でした。そして、とても感情移入の上手な方でした。

ニノミヤさん(仮)は、診察室に入った時からずっとニコニコしていました。
癌だと告げても「治るんでしょう?」と表情は変わりませんでした。

「現在の医療では、ニノミヤさん(仮)を、健康な状態に戻すことは出来ません」

しばらくの沈黙のあと、涙を、流されました。

「治らないんですか・・・?」と


ロールプレイングであることを完全に忘れて、
コミュニケーションスキルのこともどこかにいってしまって、
どうしたらニノミヤさん(仮)が泣きやんでくれるか、そればかりに必死になってしまいました。
進行役の方が止めて下さったのに、「どうして大事な話を遮るんだ」と、一瞬イラッとしました。
そのくらい、集中していたんでしょうか。
たった7分間のロールプレイングでしたが、ものすごく、消耗しました。

~・~・~・~・~


振り返りの時にフィードバックして頂いた内容に、
「『共感』は大切なことだけど、『同化』すると冷静でいられなくなる」
というものがありました。

未熟さゆえに、感情に振り回されてしまうと、
医師としての冷静な判断を下せなくなってしまうことがある・・・

未熟の塊のようなイヌイグチは、この言葉が突き刺さりました。
肝に銘じよう、と思いました。

また、患者役として告げられたときの気持ち。
深く、肝に銘じて、決して忘れまいと思いました。
by muzukyo | 2013-02-18 22:34 | 乾口


水島協同病院11年度研修医


by muzukyo

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